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2026-07-01

胸部(心臓)の聴診は、情報の宝庫 名誉院長 風谷 幸男(こんにちわ2026年7月号)

胸部(心臓)の聴診は、情報の宝庫

  外来を受診しても検査なしでは不安に思う方がいると思います。勿論、診療に必要な検査は欠かせません。一方で、身体診察は多くの情報を与えてくれます。特に、胸部の聴診は循環器内科医が重視する身体診察の一つです。何を聞いているのでしょうか。まず、心臓が発する音を聴診します。心臓が1回拍動する間にⅠ音、Ⅱ音、Ⅲ音、Ⅳ音を発します。Ⅱ音は2つからなり、5つの音を聞き分けます。この他に、過剰心音を発する方もいます。これらの音の強弱、性状、音域、呼吸に伴う変動など、短時間で様々な角度から聞き分け、患者さんの心臓を評価します。心不全を例にとると、問診と聴診を終えた時点で緊急入院の必要性について概ね判断していることが少なくありません。
 次に、心臓や動脈が発する雑音を聴診します。雑音を発する心臓の病気はたくさんありますが、ここでは、大動弁狭窄症と逆流症について述べます。大動脈弁狭窄症は熟知すれば聴診だけでほぼ診断できます。雑音の部位や性状を聞き分けることにより重症度も概ね推測できます。これに対して、大動脈弁逆流症の雑音は心臓の聴診に熟知した循環器内科医でも神経を集中しないと聞き漏らす可能性があります。しかも、雑音の大きさと重症度が一致しないことがあり、小さい雑音でも大丈夫とは言い切れません。私は、聴診器を当てた瞬間のⅡ音の響きに少しでも異変を感じた時はより慎重に聴診するように心掛けています。聴診の精度を上げるために患者さんに左側臥位や前かがみなどの体位を取っていただくこともあります。動脈の病気では、首から足の付け根まで広い範囲の聴診をすることで有益な情報が得られることがあります。
このように、心臓や動脈の聴診は短時間で沢山の情報を得ることが出来る極めて有用な手法です。神経を集中し、一期一会の気持ちで緊張感をもって行う診察行為の一つです。患者さんの心臓の状態を正しく評価するための真剣勝負が続きます。

名誉院長 循環器内科 風谷 幸男

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