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2018-03-01

こんにちわ2018年3月号 インスリンの展望 糖尿病内科 藤原 正純

 名古屋大学と東京医科歯科大の研究チームは、血糖値に応じて自動的にインスリンを出せる新素材を開発した。実用化すれば、患者の皮膚に貼るだけで糖尿病治療ができるようになり、5年後にヒトでの臨床研究を目指すという。研究成果が米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」(電子版)に掲載された。

 糖尿病は血糖値を下げるインスリンを膵臓(すいぞう)で作り出せなかったり、インスリンの効きが悪くなったりする。インスリンはタンパク質なので胃で分解される為、治療では患者が自分で皮下注射するなど手間がかかる。フェニルボロン酸という有機化合物を高分子のゲルに組み込んだ新素材を開発し、周囲のブドウ糖濃度が低い時には薄い膜に覆われるが、濃度が高くなると、1秒以内に膜の構造が無くなる。糖が低くなればまた元に戻る。ゲルの中にインスリンを入れると血糖値が高い時には膜が無くなりインスリンを放出し、血糖値が低くなれば膜に覆われてインスリンの放出が止まる。ブドウ糖を与える試験では、正常に近い血糖値の上昇まで抑えられた。低血糖も起こらず、効果は3週間持続することも確認した。「皮膚に貼るだけで、インスリンを注入できる機器が安価に作れる可能性がある」とのコメントも力強い。

 現在はインスリンを「胃で分解されず」に腸まで届けるDDSが開発されており、飲み薬となるのも近々の予定である、欧州では既に作成済である。IPS細胞、ES細胞を用いた人工膵島も研究中であり、10年後には隔世の感があると考えている。

 しかしながら、研究会、学会などで多くの研究者の一致した意見としては、未だ解らない部分の方が遥かに多く、己自身が知らない事を実感する次第である。勿論、ゴールは遥か彼方にあり、まだ、始まったばかりである。そして、如何なる技術、薬剤が開発されても、人が作り、用いるものであり、完璧なものは何一つとして無く、予期せぬ故障、事態は必発である。使用する医師、医療従事者の人間性、日頃の精進が最も重要であるのは言うまでもない。

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