医療機関向け広報誌「まんなか」2026.5号 膝関節診療の判断ポイントと治療の選択肢
インタビュー全文
Q1.プロフィールを教えてください
これまでの経歴
・学歴
平成14年3月愛媛大学医学部医学科 卒業
平成23年3月愛媛大学大学院医学系研究科博士課程 卒業
・職歴
平成14年6月 愛媛大学医学部附属病院 研修医
平成15年4月 愛媛県立中央病院整形外科 研修医・専攻医
平成17年4月 北海道美唄労災病院勤労者腰痛・脊損センター 整形外科 医員
平成18年4月 愛媛県立今治病院 整形外科 医員
平成23年4月 石川病院(現HITO病院)整形外科 医長
平成25年8月 済生会西条病院 整形外科 医長
平成26年4月 愛媛大学医学部附属病院 整形外科 助教
所属学会
日本整形外科学会 中部日本整形災害外科学会 日本リウマチ学会 日本膝学会 日本人工関節学会 日本股関節学会 日本CAOS学会 中国四国整形外科学会 日本組織移植学会 日本コンピュータ外科学会
資格 免許
日本整形外科学会専門医 日本リウマチ学会専門医
趣味
映画鑑賞
Q2.忽那先生の専門分野や強みについて教えてください
私は膝関節外科を専門とし、低侵襲な鏡視下手術から人工関節置換術まで幅広い診療を行っています。膝関節の疾患は、加齢に伴いクッションである軟骨が摩耗する変形性膝関節症と、スポーツ外傷などによる靭帯損傷や半月板損傷に大別されます。膝関節は歩行や階段昇降時に体重の数倍の負荷がかかる荷重関節であり、障害を放置すれば日常生活の制限に直結します。これは単に身体的な痛みにとどまらず、趣味や社会活動といった「人生の質」を著しく低下させる要因となります。診療の最終目標は、除痛はもちろんのこと、患者さんが再び社会とのつながりを維持し、心身ともに満たされた「Well-being」な人生を再獲得していただくことにあります。
Q3:膝関節の内視鏡手術や人工関節手術の特徴や患者さんへのメリットについて教えてください
膝関節鏡視下手術(内視鏡手術)は、靭帯再建や半月板縫合において選択される治療法です。小切開で行うため組織侵襲が少なく、術後の関節拘縮を最小限に抑えられるメリットがあります。ただし、進行した変形性膝関節症に対しては鏡視下手術のみでは効果が限定的であることも広く認識されています。
一方、末期の変形性膝関節症に対して高い信頼性を有するのが人工関節置換術です。損傷部位をインプラントで置換するこの術式は、確実な除痛が期待できます。ここで重要なのは、人工関節を動かす動力源は患者さん自身の筋力であるという点です。したがって、筋力が著しく低下する前の適切なタイミングでの介入が推奨されます。
また、活動性の高い若年層の患者さんには、関節を温存する「骨切り術」という選択肢もあります。安易な術式選択を避け、個々の活動性や病態を詳細に評価した上で、最適な治療法をご提案しています。
Q4:「このような症状があれば紹介を検討してほしい」というポイントがあれば教えてください
ご紹介いただく疾患の多くは変形性膝関節症ですが、その背景には筋力低下や骨粗鬆症が複雑に関与しているケースが少なくありません。初期段階では、運動療法やストレッチを中心とした保存的治療が第一選択となります。
ご紹介を検討いただく指標としては、適切な保存的治療を3か月間継続しても疼痛が改善しない場合や、疼痛により歩行距離が短縮するなど、生活制限が顕著になった段階が挙げられます。また、「膝が外れるような不安定感がある」「膝が引っかかって伸びない(ロッキング)」といった症状は、半月板や靭帯の器質的な損傷が疑われるため、早期の専門的評価が必要です。診断が確定しない段階であっても、画像所見と臨床症状に乖離がある場合などは、検査目的でもいいので遠慮なくご相談ください。
Q5:忽那先生はどのような基準で手術適応を判断されていますか
手術適応の判断において最も重視しているのは、手術によって「患者さんの生活機能が確実に改善するか」という点です。筋力の著しい減衰や重度の骨粗鬆症を合併している場合、術後の回復が遅延したり、満足度が低下したりするリスクがあります。そのため、術前からの筋力訓練や骨粗鬆症治療、生活環境の整備、そして患者さんご自身やご家族への教育を含めたトータルマネジメントが不可欠です。
具体的な基準としては、十分な保存的治療を行ってもなお日常生活に支障を来す疼痛が残存し、かつ画像診断上の構造的変化が症状の原因であると明確に特定できる場合に手術を検討します。手術はあくまで手段であり、目的は患者さんの活動性の維持です。
Q5:地域医療機関の先生方へメッセージをお願いします
患者さんの治療効果を最大化するためには、地域での保存療法と適切なタイミングでの外科的介入の緊密な連携が不可欠です。診断に苦慮される症例や手術適応の検討など、どのような事案でもお気軽にご相談ください。

