腎臓を大事にしましょう 循環器内科 主任医長 榎本 大次郎(こんにちわ2025年11月号)
肝腎要(かんじんかなめ)の言葉が示すように私たちの体の中で大きな役割を担っているのが腎臓です。その割に身近で「腎臓の調子が悪くってさあ」という言葉が聞かれないのは、ちょっとやそこら腎臓の機能が落ちても体調に現れることがない“沈黙の臓器”だからです。体内では血液をきれいにする仕事を休まずに続け、あまり文句を言わないありがたい存在ですが、困ったことも分かっています。年齢とともに機能が低下しやすいのです。問題のない元気な腎臓でも30歳を過ぎるとじわじわと働きが落ちて、70歳くらいで6~7割まで低下してきます。それでも生涯を終えるまでには十分に働いてくれる力がありますが、経年劣化しやすく予備の力が少ない臓器と言えます。しかも、高血圧・糖尿病といった生活習慣病が加わると機能低下が加速してしまい、一生の間でその働きが尽きてしまうことになりかねません。気づかれにくい慢性腎炎や相性の悪い薬が原因になることもあります(最近ではサプリメント紅麹がニュースになりました)。十分な働きができなくなってしまうと腎臓の代わりをしてくれる治療(透析療法や腎移植)を行うことになります。
普段は気付かれにくい腎臓の状態ですが、近年は早い段階で検出できるように計算式を使って腎機能(糸球体濾過量)を数値化するようになりました。2002年からは慢性腎臓病という新しい病名が付けられ、腎臓の推定値が60を下回った段階で検査や治療を受けることが勧められています。2012年には日本人に合わせた新しい計算式が開発され、より正確な検査法(シスタチンC測定)が使えるようになっています。
モノ言わぬ自分の腎臓が気になったら、まずは検査を受けてみなくては始まりません。一般的な健診で腎機能測定・尿検査は行われますので、職場や市町村の案内に従って検査を受けるのが一番の近道です。二次検査を勧められた時には当院へお気軽にご相談ください。
循環器内科 主任医長 榎本 大次郎