絵画の風景

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 大正12年6月に創設された倉敷中央病院には、開院以来待合室や診察室などに当時としては珍しいフランス製の立派な絵の複製がかけられていて、今日まで多くの人たちの心をなごませ、目を楽しませてきた。


これらは創設者の大原孫三郎が、この病院の壁面を飾るために大原コレクションを蒐集した洋画家児島虎次郎に命じてヨーロッパで買わせたものであった。大原が倉敷中央病院を単なる医療目的のためだけでなく、高い理想をもったヒューマン・リレーションの場とすべく、植物温室などをはじめ細部にわたって人間的配慮をほどこしたことは余りにも有名であるが、これらの複製画もそうした役割を今日まで果たしてきたのであった。


この度新築された西条中央病院にも各所に数多くの絵画が展示されているのを見て、倉敷中央病院で実現された大原孫三郎や総一郎の父子二代の理想がこの病院にも受け継がれているのを知ったのである。倉敷のは複製であるが、西条のはすべて実作品であり、しかもそのすべてが西条を中心とする愛媛県出身の、いわゆる郷土作家の作品によって占められていることに大きな意義がある。その中には中川八郎、中野和高、野間仁根などの大家の作品も含まれているが、これらの絵画が病める人、見舞う人たちの心の憩となっているだけでなく、病気に関わりのない美術愛好家や一般の人たちからも関心を寄せられて見学者も多いという。郷土作家の作品であることが、こうゆう人たちの親近感をよりいっそう深めているのであって、云わば病院が美術館的役割を果たしているのである。


絵をかけている病院は数多くあろうが、医療という枠をこえて地域社会における文化的な貢献を果たしつつある例は稀有なことだといえよう。医療は人間の肉体を癒し、美術は人間の心を癒してくれる。このふたつが融合して西条中央病院が開かれた公共の場として、多くの人たちに親しまれ愛されることになれば、大原二代の理想はさらにその輝きをますにちがいない。

 

 

(元)大原美術館館長  藤田慎一郎 (昭和61年 記)

 

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