急性冠症候群(ACS)に対する脂質管理プロトコールの取り組みと成果

再発予防を目的に、入院中から退院後まで切れ目のない脂質管理を目指しています。

ACS後の再発予防に向けた脂質管理

急性心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠症候群(ACS)を発症した患者さんでは、 その後の心筋梗塞や心血管イベントの再発を防ぐため、LDLコレステロール(LDL-C)を十分に低下させることが重要です。 当院では、ACS後の脂質管理をより確実かつ標準的に行うため、2025年10月より 多職種介入型ACS脂質管理プロトコールを導入しています。

ACS脂質管理プロトコールの概要

① 入院中 高強度スタチンとエゼチミブの併用を基本とし、早期から積極的な脂質低下療法を行います。
② 退院時 家族性高コレステロール血症、多枝冠動脈疾患、polyvascular diseaseなどの高リスク例では、 PCSK9標的療法の早期導入を検討します。
③ 初回外来 LDL-Cを再評価し、70 mg/dL以上の場合にはPCSK9標的療法を含めたさらなる治療強化を検討します。

多職種で治療を支援します

薬剤師
LDL-Cを確認し、必要に応じて治療強化を提案します。
看護師
自己注射製剤を使用する患者さんに、使用方法や手技を説明します。
事務職員
治療にかかる費用や自己負担について説明します。

プロトコール導入後の成果

2024年4月から2026年8月までに当院で治療したACS患者さんを対象に、 プロトコール導入前後で脂質低下療法とLDL-C管理を比較しました。 初回外来時のLDL-Cが評価可能であった患者さんは、導入前50例、導入後33例でした。

高強度スタチン
22.0% → 72.7%
エゼチミブ
58.0% → 93.9%
PCSK9標的療法
2.0% → 48.5%
初回外来時 LDL-C中央値
65.0 → 41.0 mg/dL
LDL-C <70 mg/dL達成率
58.0% → 97.0%
LDL-C <55 mg/dL達成率
26.0% → 72.7%

結果のまとめ

ACS脂質管理プロトコール導入前後の結果スライド
図:ACS脂質管理プロトコール導入前後の脂質低下療法およびLDL-C管理の比較

今後の取り組み

プロトコール導入後、脂質低下療法の実施率は大きく上昇し、LDL-C値および目標達成率も改善しました。 当院では、この取り組みをさらに発展させるため、ACS脂質管理プロトコールの改定を予定しています。 より早期かつ確実に適切な脂質低下療法へつなげられるよう、治療目標や治療強化のタイミングを見直し、 多職種での支援体制についても継続して改善していきます。

ACSプロトコールの改定 最新のエビデンスや診療実績を踏まえ、より早期かつ厳格なLDL-C管理を実践できるプロトコールへ更新していきます。
CCSへの展開 慢性冠症候群(CCS)の患者さんにも、継続的かつ標準化された脂質管理を行うためのプロトコール導入を予定しています。
LEADへの展開 下肢動脈疾患(LEAD)の患者さんにも対象を広げ、動脈硬化性疾患全体の再発予防・進展予防につながる脂質管理体制を整備していきます。

今後も、医師・薬剤師・看護師・事務職員が連携し、ACSにとどまらずCCSやLEADを含む動脈硬化性疾患に対して、 患者さん一人ひとりの状態や希望に応じた質の高い二次予防を提供できる体制づくりを進めてまいります。

※本内容は当院の診療実績を後ろ向きに検討した結果です。実際の治療方針は、年齢、合併症、検査結果、 治療歴、患者さんの希望などを踏まえて個別に決定します。