こんにちわ誌

2016年8月号
多剤耐性細菌蔓延の脅威   内科部長 太宰康伸

  先日、多剤耐性の腸内細菌治療の最後の切り札であるコリスチンに加えて、腸内
細菌による感染症治療の砦となるカルバペネム系抗生剤の両方に耐性を示す細菌によ
る感染症が、日本でも初めて報告された。アメリカでは耐性菌が蔓延しはじめ、多数
の方が、耐性菌による感染症で命を落としていると報告され、薬剤耐性菌の撲滅を国
是として掲げた。日本でも、超多剤耐性菌の発生が危惧されていたが、それが先の報
告のように現実のものとなりつつある。これは、感染症の治療で入院されても、使え
る抗生剤がなく、治療できませんという事態が、早晩出現してもおかしくない状態に
なりつつあるということを意味している。耐性菌出現の原因として、風邪の95%はウイ
ルス感染で抗生剤は無効なのに、不適切に抗生剤が投与されている。ニューキノロン
系のような広域抗生剤が、最初から投与されている。家畜飼育・養殖で使用される抗
生剤の総量は、人への使用の総量を超えているなどなどがあげられる。
  耐性菌の発生を完全に防ぐことは困難だが、発生を抑えることは可能である。それ
には、抗生剤を投与する適応を厳密にすることと広域抗生剤を濫用しないことである。
そのためには、まず、その熱、その感染症、本当に抗生剤投与の適応かと自問すること、
ついで、抗生剤投与の適応と判断されれば、最初から、広域の抗生剤投与が必要かどう
かを見定め、可能であれば狭域の抗生剤を使用することが基本となる。その前提として、
熱が出ているから、抗生剤を投与しておけばいいという、いわれのない安心感を捨て去
ることができるか、また、血中濃度が治療域に達しにくい第三世代の内服セフェム系抗
生剤をむやみに使用しないようにできるか、今、医師の力量が試されている。
 
 
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