こんにちわ誌

2014年6月号
術後管理におけるパラダイムシフト            外科医長 八木 隆治

 『ある時代・集団を支配する考え方が、非連続的・劇的に変化すること。社会の規範や価値観が変わること。』をパラダイムシフトと言います。

 私たち外科領域では例えば手術後の傷の消毒でしょうか。最近では手術後の傷を消毒することがまずなくなりました。私が研修医だった十数年前、毎朝の回診とは傷の消毒をしてガーゼ交換を行うことが仕事でした。しかし当時の部長が、手術後の傷の消毒は必要ないらしい、との新たな知見をいち早く取り入れたため、私も消毒が不要な理由について学ぶ機会を得ました。縫合した傷は48時間程度で閉じるので、その後の消毒には意味がなく、水に濡らそうと風呂に入ろうと構わない、というのがその理由です。

 他にも手術後の食事についてもそうです。手術後の食事はおならが出てから、と認識されているのではないでしょうか。しかし2006年版の大腸癌治療ガイドラインの解説という冊子には『手術直後の経口摂取(食事)は,従来は手術後4~5日目に始まる排ガス(おなら)を確認してから始めていましたが,最近では,より早い経口摂取開始が行われるようになりました。また,流動食からの徐々に固形物の量を増やして行く方法は習慣的な要素が大きく,最近は手術後早期から通常の食事を開始する病院も見られます。』とあります。昔ながらに腸の安静を理由に経口摂取を制限するのは「安静の大獄」いったわけです。

 このように今までの風習でなんとなく行われていたことがエビデンスという科学的根拠をもとに変わっていっています。インターネットなどで各種ガイドラインや他施設での治療法や最近の風潮を知ることができますので興味をもって調べてみるのも良いかもしれません。

 

Copyright © 2017 西条中央病院 All Rights Reserved.