こんにちわ誌

2012年11月号
「卒後臨床研修に携わって」  内科部長 太宰康伸

 医師の確保は、この地域の医療を維持・確保するために最も切実な問題である。さらに、市民の方々の意識も高まり、医師の質も以前にもまして問われている。そういう状況の中で、良質な医師が地域へ定着してもらえるかどうかという点でも、卒後臨床研修は非常に大きな役割を担うようになってきた。

 医学部卒業後、数年間は、医師の人生は、畑を耕すことが終わり、種をまき肥料を与える時期に相当する。更に、鉄は熱いうちに打てといわれているように、2年間の卒後臨床研修は、医師のそれからの人生に大きな影響を与える非常に大事な研修期間であり、この間に、すぐれた指導・研修を受けられるかどうかが、医師のその後の人格形成にも大きく影響すると私は思っている。一方、病院・指導医の側にも、それがかなえられる様な環境の整備とたゆまぬ努力が求められている。

 指導医の側から見た卒後臨床研修の最大の目的は、研修医が医学生時代に得た各科の知識・技術などをさらに深め統合し、自分でものを考え判断して、自律的に滞りなくこれからの臨床の場に活かせるようになるように導くことにあると思う。これがうまく機能するためには、まず、研修医の状況を理解しておく必要がある。多くの研修医に接してみると、研修医ごとに、知識、考え方、倫理感などが多様であることに気付かされる。その中でも、気になったことは、知識の偏在、人の気持ちを察する共感力が弱い、他者と情報をうまくやりとりするコミュニケーション能力が弱い、人から教えられることには慣れているが、自分で考えることに慣れていない、問診・身体所見から必要な情報を取捨選択して、これまでの知識と統合し適切な診断を導き出す判断力が弱い、診断から治療への移行が不十分、重症度の判断・治療の優先順位・治療法の選択の不慣れなどが感じられる。これらのことを踏まえた上で、更に、個々の研修医の個性を尊重し、指導医の側も、より効率的で有効な、モチベーションの上がる指導を行わなければならない。また、断片的な知識・技術の伝達に偏らないように、系統的・包括的な指導・教育体制を整えていく必要がある。ただ単に教えただけでは、実践の場で生かせる知恵にまでは昇華しないことを、肝に銘じておかなければならない。

 研修医が、自律的に判断し行動できるように、本当に指導・援助しようと思うと、時間も手間もかかり大変であるが、自分の未熟な部分を悟らされ、熟考することができたり、研修医から教えられることも非常に多く、自身の成長・修養にもなる。教えている側が、実は学ばされているのである。

 最後に、職員・市民の皆さんにお願いしたいことは、未来を担ってくれる研修医が、地域に根付いてくれるように、温かい目で見守り、一緒に学び・育てるつもりで、臨床研修に協力して戴きたい。

 

Copyright © 2017 西条中央病院 All Rights Reserved.