こんにちわ誌

2009年7月号
「ヘリコバクターピロリ菌と胃の病気」 副院長 放射線科 二宮克彦

「ヘリコバクターピロリ菌と胃の病気」

 ヘリコバクターピロリ菌は人間の胃に住みついている細菌で、日本人の2人に1人、約6000万人が感染していると言われています。従来胃の中は強い酸性のため無菌と信じられてきましたが、1982年にオーストラリア人の研究者が胃粘膜から初めてピロリ菌の培養に成功しこの発見を機会に研究が急速に進み、実は胃の病気と深い関わりがあることがわかってきました。

 以前は胃潰瘍の原因は胃酸過多やストレスが原因と言われていましたが、胃・十二指腸潰瘍の8~9割はピロリ菌が原因と判明しています。潰瘍の治療は従来胃酸を抑える制酸剤が中心でしたが、薬の服用を中止するとすぐに再発するのが問題でした。しかし抗生剤を約1週間服用することで約8~9割で除菌が可能となり、除菌に成功した場合再発率は3%程度に激減し、難治性潰瘍や再発性潰瘍で悩まれていた方には大きな福音をもたらしています。

 また加齢現象と思われていた慢性胃炎も、実はそのほとんどがピロリ菌感染が原因であることも証明されています。慢性胃炎が進行すると粘膜が薄く脆弱となる「萎縮性胃炎」さらに進むと胃の細胞が腸のような性質に変わる「腸上皮化生」を来たします。慢性胃炎自体はそれほど強い症状も無いのですが、進行した萎縮性胃炎や腸上皮化生性胃炎は胃癌の発生母地となることがわかっています。現在胃癌の最大の原因はピロリ菌の持続感染による慢性胃炎であると考えられていますが発生頻度は感染者の0.4%程度と言われています。

 では除菌により胃癌の予防は可能でしょうか。除菌による胃癌の予防効果を調査した研究も多くなされ一定の予防効果は確認されていますが100%では無いようです。除菌により胃癌の発生が約1/3に減少した報告もありますが、既に萎縮性胃炎の完成した年配の方では予防効果はそれほど高いものでは無く、効果が高いのは萎縮性胃炎の程度の軽い若い方のようです。従って若い方では積極的な除菌が望まれ、年配の方においては除菌に成功した場合も定期的な胃の検査が必要と考えられています。

Copyright © 2017 西条中央病院 All Rights Reserved.