こんにちわ誌

2009年2月号
「現代性病事情」 産婦人科部長 是永進

「現代性病事情」

 人類が性病の“訪い”を受けたのは有史以前の事であり、医学の父と称されるヒポクラテスも急性淋病について記載しており、その原因を”ビーナスの喜び“と呼んでいる。このブラックユーモアとも思える表現の裏には多少の皮肉と今一つ深刻でない病状が垣間見える。

世の移り変わりを記載した歴史の陰の顔である風俗史は性病の歴史と色濃く結びついており、宗教観、道徳観が混乱しデカダンス的風潮が台頭した時、彼ら(性病)は栄え、厳格な道徳社会では衰退した。基本的に彼らは感染力、生命力、ともに弱く、粘膜と粘膜の濃厚な接触によってのみ感染する。したがって、一夫一婦制の社会では原則的に絶滅する筈であるが、現在の状況はそうでなかったことを物語っている。

近代にいたって、病原菌の発見と特効薬の開発によって大きな打撃を受けたが、一方で耐性菌の出現、グローバル化による感染の拡がり、性の自由化、性風俗、性嗜好の変化によって急速に種類、毒性、感染力を増強し、否応なく日のあたる場所で注目を集めるようになった。

例えば、エイズはアフリカの一地方のウィルス性風土病がグローバル化によって拡がったものであり、また1990年代以降、日本の性病トップになったクラミジアはトラコーマという眼の病気がオーラルセックスなどの性嗜好の変化によって性病化したものである。その結果、彼らは最早、性だけの性病(VD)という概念に納まらず、性感染症(STD)として語られるようになった。

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