こんにちわ誌

2006年6月号
「産声の聞こえない日々」 副院長 産婦人科 西村哲一

「産声の聞こえない日々」

 いつに無く、雨の多い五月も終わり、若葉が梅雨の雨に濡れた姿が似合う季節になりました。また長い暑さとの戦いの季節になります。私の病棟で赤ちゃんの声が聞こえなくなって約一ヶ月がたちます。中央病院創立のときからずっと消えることの無かった声です。

 今年の冬、突然に医師派遣の中止を申し込まれ、いろいろ対策を講じましたが、思うに任せず、お産の一時中止を決断しなくてはいけなくなりました。病院でお引き受けするお産は、いろいろな合併症や、妊娠中の異常があるお産が多くなります。一人の医者が二十四時間、三百六十五日対応するには非常に負担が大きく、また、緊急時に対応するには一人の力には限度があります。そこで已む無く妊婦の皆さんの安全と安心を第一にお産の引き受けを、またスタッフの確保ができ、安心してお任せいただけるまで、中止させて頂く事になりました。

 今、全国的に産婦人科の医師が激減しています。毎年、医師になる数は一万人近く居るのに産婦人科を選ぶ人は、十年前から見ても六、七十パーセントです。医師の中でも三K+αと言われる産婦人科の宿命でしょうか。それでも、未来の社会を背負って立つ元気な赤ちゃんの誕生を願って頑張る産婦人科医の現れることを願ってやみません。

 診療科の中で唯一、女性専科をうたった産婦人科は、お産だけではなく未来のお母さん予備軍、母親として、また重要な社会人として働く女性の様々な肉体的、精神的苦痛と一緒に戦う診療科です。今からも女性の相談相手として愛される科になりたいと思っています。

 季節は確実に巡り、太陽の季節、夏はもうそこです。じっくり体力を充実して乗り切りましょう。

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