こんにちわ誌

2003年4月号
「”ひねもす”のすすめ」 副院長 西村哲一

「”ひねもす”のすすめ」

 “春の海ひねもすのたりのたりかな”先の見えない不景気の風吹きすさぶ中とはいえ、今年もまた季節は間違うことなく百花咲き乱れる香しき春になりました。桜も今年は咲き急ぐことなくその登場を果たしたようです。

こんな気候の中、のんびりと一日を過ごしていると、頭の中にさきの句が浮かんできます。蕪村の句だったと思いますが、なんとも春の一日のゆったりした時の流れがうまく表現された俳句です。忙しくトゲトゲしい生活の中、一日、このような気持ちで過ごせたらどんなにいいことでしょう。この句を思い出す時、いつも一緒に思い出すのが吉田兼好の“徒然なるままにひぐらし硯にむかいて”うんぬんの一節です。一日中ああでもないこうでもないと世の中を愚痴りながら悶々としながら日を送る、こんな様子がなんとも現代人の日常と重なり合って身につまされます。兼好が先の句のような海を見ていたらどんな文章を書いたでしょう。非常に興味深いところです。“ひねもす”の一日と“ひぐらし”の一日、楽観(天)主義と悲観主義の差と言ってしまえばそれまでですが、同じものを見ても正反対の答えがでてくるのも人間の心の複雑なところです。

好調の中に不調をよみ、不調の時こそ好調の時の気概をおもう・・・そんな生き方がいま必要なのかも知れません。

ときは春、みなさんの生活の中にときどき“ひねもす”の時間を作ってみませんか?心の中の春がのぞけるかも・・・。

Copyright © 2017 西条中央病院 All Rights Reserved.