こんにちわ誌

2003年2月号
「糖尿病の治療が進歩しても・・」 内科医長 田中 清宜

「糖尿病の治療が進歩しても、最も大事なのは食事・運動療法」

 糖尿病の世界最古の記録は、紀元前1550年頃のものですが、日本の糖尿病患者第1号は、光源氏のモデルとされる藤原道長(966-1027年)です。彼の最期は、糖尿病でできた背中の腫れ物から敗血症を起こし、その後成すすべもなく昏睡状態に陥り亡くなっています。
 ところで、糖尿病の原因となる臓器・メカニズムは、19世紀末まで全く不明でした。1889年、糖尿病は膵臓内の(未知の)物質が不足するために起こるであろう事が報告され、最終的に血糖を下げるホルモン(インスリン)が発見されたのは、1921年11月のことです。それから2ヵ月後には既に、インスリン注射が14歳の糖尿病の少年に試され、その結果、彼は、それまで助かることの無かった糖尿病という病で命を落とさずにすんだのです。
 一方、その頃の日本では、未だ糖尿病の治療手段として腹部にレントゲンを照射したり、阿片や毒物の亜ヒ酸をのませる医者が居り、世間でも、効きもしない民間薬がはびこり、悪徳業者が入り乱れる状況でした。その後現在に至るまでの80年で、科学がめざましく進歩したことにより、種々のインスリンが私達の手に入る様になりました。
 さらに、糖尿病の内服薬に関しても、この10年間だけで4種類の新薬が発売され、私達は糖尿病に対する数多くの治療手段を手に入れました。その結果、少しずつ1人1人の病態に合った治療法が選択できる様になりつつあります。しかしながら、糖尿病を根治する魔法の薬が出来る見込みはなく、糖尿病治療で食事・運動療法が最も大事である事実は、まだしばらくの間変わりそうにありません。

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